『ウマ娘 シンデレラグレイ』アニメ制作はCygamesPictures！原作再現の異常なまでのこだわりとクオリティの正体に迫る

「これ、本当にテレビアニメのレベルなの？」

『ウマ娘 シンデレラグレイ』を観た人がまず口にするのは、その“異様なまでの完成度”です。

制作を担うのはCygames直轄のアニメスタジオ・CygamesPictures。この社内制作体制がなぜここまで“熱く、濃く、リアルなウマ娘”を生み出せたのか──。

今回は、制作会社という視点からこの作品のクオリティの秘密に切り込みます。

『ウマ娘 シンデレラグレイ』とは？アニメの世界観と作品概要

“灰色のシンデレラ”オグリキャップの物語

『ウマ娘 シンデレラグレイ』は、ウマ娘シリーズにおけるスピンオフ作品でありながら、その存在感はもはや“もうひとつの本編”と呼ぶにふさわしい。主人公は実在した伝説の競走馬・オグリキャップをモデルにしたウマ娘。地方レースから中央へ――その“灰色の逆転劇”を描いた物語は、アニメ化によってさらに一層、深みと熱を帯びて動き出した。

原作は漫画雑誌『週刊ヤングジャンプ』で連載されており、2020年のスタート以来、競馬ファンだけでなくアニメ・漫画ファンにも広く支持されてきた。ウマ娘シリーズの中でも、よりシリアスで骨太なドラマ性と、“スポ根的文脈”が強く打ち出されているのがこの『シンデレラグレイ』の特色だ。

オグリキャップは、地方競馬のスターとして登場しながらも、その実力とひたむきな姿勢で中央の強豪たちを次々と打ち破っていく。その姿はまさに“シンデレラ”だが、描かれるのは甘さのないリアルな勝負の世界。アニメ版でもこの空気感は継承され、むしろ原作よりも“感情を削るような演出”によって、彼女の孤高が際立っている。

ウマ娘という枠組みは確かに“美少女×競馬”という意外性で知られるが、『シンデレラグレイ』に限っては完全に別の軸にいる。美しさや萌えよりも、勝負に人生を懸けたアスリートたちの緊張感。アニメというメディアによって、この“地に足ついた熱さ”が見事に可視化されているのが、筆者としてはとても痛快だった。

そして何より、この作品のすごさは「オグリキャップというキャラが、虚構の存在なのに“実在していたかのように”感じられる」こと。これこそが、シンデレラグレイという物語の演出力の真骨頂だと感じる。史実とフィクションの境界をなぞるようにして、ひとりのウマ娘が“伝説”を生む瞬間。そんな“実感”を観る者に与える力が、この作品には宿っている。

この段階でハマってしまった方は要注意。これ、観れば観るほど「彼女の物語をもっと知りたい」って思っちゃうんですよ……本当に。

本編シリーズとの違いと魅力

『プリティーダービー』を筆頭に、これまでのウマ娘アニメは基本的に“チームの中で成長する”群像劇の形式をとってきた。明るく、コミカルで、レースは熱く、それでも全体的には“夢と努力と友情”という王道フォーマットに収まっていた印象がある。

ところが『シンデレラグレイ』は、そのフォーマットを意図的に逸脱する。主人公オグリキャップは、最初から孤独だ。どこか空虚で、感情を表に出さない彼女が、レースという舞台だけで自らを語っていく。そして、勝利を重ねるたびに生まれる“強者の孤独”。この構造は、これまでのウマ娘とはまるで違う文脈で成り立っている。

筆者としてはここが最大の“ズレであり魅力”だと思う。あくまで群像のなかで光るキャラクターではなく、「物語のすべてが彼女の視点に集束していく」タイプのアニメ。その分、物語の密度は濃く、キャラクターの“背負うもの”が重たい。これがアニメになることで、彼女の無言の意思や覚悟が、表情・間・音楽によってじわじわと浮かび上がってくるのがたまらない。

ウマ娘＝アイドル的な可愛さ、という認識で本作に触れると、かなりギャップを感じるかもしれない。でもそのギャップこそが、アニメ『シンデレラグレイ』を唯一無二の作品にしている。

“ウマ娘のアニメ”ではなく、“オグリキャップという物語”のアニメ。そう言い換えてしまいたくなるほどの、強度と覚悟がこの作品には宿っている。

制作会社はどこ？CygamesPicturesの正体に迫る

なぜCygamesは社内にアニメスタジオを設立したのか

『ウマ娘 シンデレラグレイ』のアニメ制作を担っているのは、CygamesPictures（サイゲームスピクチャーズ）。名前から察せられる通り、原作ゲームを開発・運営するCygamesが2016年に設立した“社内アニメスタジオ”だ。Cygamesがなぜわざわざ自前でスタジオを持つに至ったのか──その背景こそ、今回の作品の異常なまでのクオリティを理解する鍵になる。

Cygamesはもともと『グランブルーファンタジー』『シャドウバース』『ウマ娘』など、ゲームの世界観に命を吹き込む演出力に定評のある会社だ。その延長線上に「ゲームの世界をアニメでも“自分たちの手で”表現したい」という強いこだわりがあった。だからこそ、アニメ制作の内製化という選択を早い段階から実現していた。

しかもこのスタジオ、単なる“グループ会社のひとつ”という枠では収まらない。CygamesPicturesは、Cygames本体が描くコンテンツ戦略の中心に位置し、プロモーション映像からTVアニメ、さらには劇場作品まで手がける“全方位型”の制作機関として設計されているのだ。

つまり、『ウマ娘 シンデレラグレイ』は、ゲームIPの一部として“アニメも外注で作っている”のではない。アニメはアニメで、完全に“本気で勝負しにきている”。この“本気度の設計”が、作品の端々にまで宿っているように感じる。

筆者としても、「社内スタジオってここまでやれるのか」と驚かされた。よくある“原作の販促アニメ”を遥かに超え、ひとつの独立した映像作品としての覚悟と野心が込められている。これがCygamesPicturesという“異端”の真骨頂だ。

原作再現に全振りした体制の強み

このスタジオが本当にすごいのは、“原作再現”という一点に、徹底的にリソースを集中させる体制を持っていることだ。特に『ウマ娘 シンデレラグレイ』では、競馬という題材のリアリティと、キャラクターが背負う感情の精度、この二点をいかに“動く映像”として再現できるかが最大の課題だった。

たとえばレースの疾走感。これは単に作画枚数を増やすだけでは出せない。馬の筋肉の動き、ターフの反発、風を切る音、観客のどよめき……それらすべてが一体となって、“本当に走っている”という感覚を生む。CygamesPicturesはここに、容赦なくスタッフの技術と時間を投入してきた。

また、オグリキャップという主人公の内面も、非常に静かな表現で描かれる。無口で感情をあまり表に出さないキャラだからこそ、その“沈黙の演技”にこそ演出の妙が必要になる。目線、口元の揺れ、ほんのわずかなまばたき──そうしたミリ単位の芝居が、彼女の“決して言葉にはしない決意”を語ってくる。

このレベルの再現度は、単なる“アニメ制作会社”では到達できない。原作を理解し、IPの持つ魂そのものに共鳴しないと無理だ。そこが、CygamesPicturesが“自社IPを自ら手がける”という形にこだわる最大の理由なのだと思う。

「作りたいものを、作りたいクオリティで、自分たちの手でやりきる」──シンプルだけど、今のアニメ業界ではそれがいかに難しいかは周知のとおり。そこに真正面から挑み続けている、このスタジオの姿勢に、正直かなり心を動かされてしまった。

制作スタッフ一覧と過去作から見える演出力

監督陣・キャラデザ担当の経歴を徹底分析

『ウマ娘 シンデレラグレイ』を語るうえで、やはり外せないのが“誰が作っているのか”という点。監督は伊藤祐毅とみうらたけひろの2名体制。このダブル監督体制は、それぞれの視点が補完しあい、作品全体に独特のバランス感覚をもたらしている。

伊藤祐毅監督は『なのはViVid』『グラブル（GRANBLUE FANTASY）』など、ファンタジーアクションに強い演出力を発揮してきた人物。みうらたけひろ監督もまた『SAOアリシゼーション』などの作画監督経験を経ており、どちらも“画に熱を込める”タイプの職人肌。そんな二人が組んで描くオグリの世界は、派手さよりも“実感”と“静かな燃焼”を優先していて、観ているとじわじわ心に染みてくる。

キャラクターデザインは宮原拓也・佐々木啓悟のコンビ。前者は『勇気爆発バーンブレイバーン』や『ユーフォニアム』などで表情の微細な変化を巧みに捉えてきた実力者で、後者は『かがみの孤城』『青の祓魔師』などで“人間の佇まい”を描く力に定評がある。オグリキャップの無言の強さ、ライバルたちの静かな闘志──それらが彼らの手によって絶妙に描き出されている。

特に印象的なのは、キャラの“硬質さ”だ。過度に萌え方向に寄らず、かといって無骨すぎもしない。洗練された等身感、目線の流し方、立ち姿の陰影。ひとつひとつに「これは“競技者”のシルエットだ」という確かな裏付けがある。筆者としてはこの“少女たちがアスリートとして描かれている”ことこそが、本作最大の美学だと感じている。

このキャラデザ陣が描くウマ娘たちは、“かわいい”を前提としながらも、その奥に“強さ”と“孤独”をしっかりと潜ませている。だからこそ、走る姿に魂が宿るのだ。

音楽・作画・3DCG…各セクションに集結した職人たち

本作の音楽を担当するのは、映画・アニメ界の巨匠・川井憲次。名前を聞いただけで「絶対安心」と思ってしまうレベルの大御所だ。彼の音楽は、壮大でありながらどこか“哀しみ”を湛えていて、それが『シンデレラグレイ』という作品のトーンと絶妙に重なっている。

川井氏の劇伴は、レースの高揚感を盛り上げるだけでなく、オグリの内なる葛藤や過去の重みを音で包み込むように表現してくる。音に“物語がある”──これは簡単にできることではない。アニメーションの枠を超えて、ひとつの“映画的体験”として昇華させてくれる。

そして総作画監督には福元陽介・高田晃・小森篤と、実力派アニメーターが集結。レースシーンでの馬体表現、観客の熱狂、画面の奥行き……あらゆる要素に対して“手が入っている”というのが見て取れる。キャラのアップ一つとっても、その表情は生きている。

3DCGもまた特筆すべき要素だ。神谷宣幸によるレースパートのCG表現は、“あえての粗密”を使い分けてリアリティを引き立たせている。全編をCGで埋め尽くすのではなく、手描きとCGをミックスすることで、“質感の揺らぎ”を演出。それが“アニメっぽさ”ではなく、“現実の中の物語”として成立しているのがすごい。

これらすべてのセクションが、互いの領域を尊重しながら、しかし同じゴールを目指してひとつに収束していく──その連携の妙は、筆者の目から見ても感動的だった。

なぜここまで“観る者を熱くする”演出が可能なのか

リアルな競馬の再構築＝レース演出の革新

『ウマ娘 シンデレラグレイ』がこれほどまでに“燃える”のは、単にキャラが魅力的だからではない。やはり圧倒的に強いのは、レース演出の力だ。競馬をベースにしたこの世界観において、「走る」というアクションがここまで熱く、ここまで美しく、そしてここまで“リアル”に感じられるのは奇跡的だと思う。

実際、アニメとして描かれる“競馬”というのは極めて難しいジャンルだ。単調になりがちで、スピード感が演出しにくく、しかも差し・逃げ・追込など戦術的要素まで詰め込まなければならない。それを本作では、“視点の使い方”と“演出の呼吸”によって解決している。

具体的には、まず“地面に近いカメラワーク”がすごい。蹄がターフを叩く振動、巻き上がる土煙、オグリの後方から迫ってくるライバルたち──視点が常に“観客の目線”を飛び越えて、レースの只中に入り込んでいる。これは、通常のスポーツアニメとは明らかに一線を画すアプローチだ。

さらに、スローと加速の緩急が絶妙。スローモーションがただの演出で終わるのではなく、選手（＝ウマ娘）の意識の変化や、勝負の一瞬の読み合いを“可視化”するために使われている。これにより、観ている側も「今、オグリはギアを入れた」「ここで差し脚を使った」と感覚的に理解できる。この没入感が、観る者のテンションを限界まで引き上げる。

筆者は、アニメの中で“競技の論理”をこれほどまでに丁寧に扱う作品を、ほとんど観たことがない。『ウマ娘』という枠に収まらず、“スポーツの持つ熱”を真っ正面から映像に変えたという点で、これはジャンルの壁を突破する試みだと断言したい。

感情の呼吸まで描く作画力と演出設計

本作の演出が観る者の心を撃ち抜いてくるのは、“走ること”が単なる勝負ではなく、“キャラクターの人生そのもの”として描かれているからだ。そしてそれを支えるのが、作画と演出の細部に至る設計だ。

たとえば、オグリキャップがスタート地点で佇むシーン。ただ立っているだけなのに、その背中からは“何かを背負っている重さ”が伝わってくる。この“空気の密度”を出せる作品って、ほんの一握りしか存在しない。

レース中も、彼女はほとんど表情を変えない。でもその無表情の奥に、焦り、確信、怒り、期待、すべての感情が込められているのがわかる。この多層的な感情描写は、作画陣のスキルの高さと、演出家の呼吸の読みの深さがあってこそ成立するものだ。

また、対戦相手の描き方にも注目したい。彼女たちは単なる“敵”ではなく、それぞれが独自の美学や走り方を持ち、それがレース中に“対話”として交錯していく。こうした“走りによる会話”が成立している時点で、この作品はただのスポ根ではない。むしろ、走ることでしか語れない心があるというテーマを、画で真正面から描こうとしている。

この“感情の呼吸を映像に変える”作業に、ここまで真摯に取り組んだアニメは極めて稀だ。そしてそれこそが、『シンデレラグレイ』が単なるキャラものに留まらず、多くの人の胸を熱くする最大の理由だと、僕は思っている。

海外レビューも熱狂！世界が驚くアニメーションクオリティ

第6話がバズった理由：演出の爆発点

『ウマ娘 シンデレラグレイ』が国内で高評価を受けているのは当然として、実は今、海外のアニメファンたちからも大きな注目を集めている。その象徴が、話題沸騰となった“第6話”だ。この回はまさに“作品全体の演出力が爆発した瞬間”であり、海外レビューサイトでも軒並み高得点を記録している。

この第6話では、オグリキャップが初めて“敗北の痛み”と向き合う。その精神的な軋みと肉体的限界が、レースの演出にそのまま乗り移ったかのような構成になっており、観る者の神経を逆撫でしてくるような緊張感に満ちていた。

特筆すべきは、“音の使い方”だ。通常のウマ娘シリーズなら、盛り上がる楽曲と共に疾走感を演出するが、この第6話では一部の場面で音楽が“消える”。音がないことで、蹄の音と息遣い、心拍の鼓動だけが際立ち、まるで“オグリの身体の内側”に視聴者が引き込まれるような錯覚を起こす。

また、作画の狂気ともいえる密度も圧巻だった。筋肉の引きつり、汗のにじみ、目の奥に宿る“負けられない意志”──そういった一つひとつの演技が、オグリの存在感をさらにリアルに立ち上げる。海外のリアクション動画でも「This is beyond anime!（アニメの域を超えてる）」というコメントが目立ったのも納得だ。

筆者としては、この回を境に“ただの名作”から“記憶に残る名作”へと作品がステージをひとつ上げたと感じている。あの第6話には、アニメスタッフ全員の執念が宿っていた。それを感じ取った視聴者が、世界中で熱狂してしまうのは、ある意味、必然だったのかもしれない。

地に足ついた“スポーツアニメ”としての評価

もうひとつ注目したいのは、海外レビューにおいて『シンデレラグレイ』が“スポーツアニメとして極めて優れている”という評価を受けていることだ。これは、萌え系の美少女アニメという枠にとどまらず、純粋に“競技を描いた物語”としての完成度が評価されている証でもある。

たとえばMyAnimeListやRedditでは、「女子キャラが主人公なのに、なぜこんなに泥臭くて、リアルなスポーツアニメなのか」と驚く声が多く見られる。彼らが指摘しているのは、走りの物理法則やスタミナ配分、ペース配分といった“戦略面”の描写の正確さだ。

これらは、単なる脚色ではなく、実際の競馬における理論に基づいた描写だという点が海外視聴者に強く刺さっている。特に欧米のアニメファンの中には、アスリートアニメを高く評価する層が存在しており、『シンデレラグレイ』はまさにそのニーズを満たす存在となっている。

また、“ドラマと競技が乖離していない”という点も大きい。多くのスポーツアニメは、競技の外での人間ドラマに重心を置くが、本作では“走ることそのもの”がキャラの人生であり、ドラマそのものだ。そのため、観ていてストレスがないし、感情移入もしやすい。

「まさかウマ娘で泣くとは思わなかった」「これをきっかけに競馬に興味を持った」──そんな声が世界中で上がっている今、もはやこの作品は“国内向けIPのアニメ化”という枠を完全に飛び越えている。

ウマ娘アニメはなぜ「観るべき作品」になったのか

“萌え”でも“燃え”でもない、新しい熱量の形

『ウマ娘 シンデレラグレイ』を観て感じたのは、この作品が“萌えアニメ”でもなければ“王道スポ根”でもないということ。もっと言えば、そのどちらの魅力も一部は持ちながら、でも本質的にはどこにも分類できない、“まったく新しい熱量”を持った作品だということです。

もちろん、ウマ娘というコンテンツの出自を考えれば、美少女×競馬という切り口が先行していた時期もありました。しかし『シンデレラグレイ』は、その枠を抜け出して、“生き様を描く物語”として成立している。これは単に、作画がすごいとか、音楽が壮大とか、そういう表層的な話ではありません。

この作品が持つ“熱”は、キャラクターたちの“背負っているもの”の重さから来ている。とくに主人公オグリキャップは、自分のためだけではなく、地方の希望、ファンの期待、仲間の夢を背負って走っている。だからこそ、彼女の一歩一歩には意味があり、それをアニメが“全身で表現している”から観る者の胸を打つ。

観ていて思うのは、「これはもうアニメじゃない、ドキュメンタリーだ」という感覚。フィクションのはずなのに、キャラクターたちの“人生の体温”がリアルに伝わってくる。そんな作品、なかなか出会えません。

筆者も、ウマ娘というコンテンツに対して最初は「可愛い女の子たちが走る擬人化企画」くらいの認識しか持っていなかった。でも今は違います。『シンデレラグレイ』を観て、“ウマ娘＝人生を走る者たちの物語”だとはっきり言えるようになった。それほどまでに、この作品は“ジャンルの外側”にいる。

これからアニメで描かれるオグリの“伝説”に期待

アニメ『シンデレラグレイ』はまだ始まったばかり。けれど、すでにこの作品が“伝説”として語り継がれる未来が見えるような気がします。というのも、原作漫画にはこれから先、まだまだ数々の名勝負と転機が控えている。そしてそのひとつひとつが、オグリキャップというキャラクターをさらに深く、強く、そして孤独にしていく。

今後アニメで描かれるであろう“あのレース”や“あの敗北”は、観る者にとっても試練になります。なぜなら、オグリを応援するほどに、彼女の苦しみも痛みも、自分のことのように感じてしまうからです。そういう物語を描くには、覚悟が必要だし、制作側にも信念が必要だ。

その点で、CygamesPicturesの制作体制は非常に心強い。社内完結だからこそ、余計な制約なく物語を突き詰められる。そして何より、彼らは“オグリの魂を知っている”。この制作陣なら、必ずや彼女の物語を最後まで、美しく、痛ましく、そしてまっすぐに描き切ってくれると信じています。

今のアニメ業界には珍しい、“本気で物語を描こうとする姿勢”がここにはある。だからこそ、筆者は言いたい。まだ観ていない人へ──『ウマ娘 シンデレラグレイ』は、あなたが思っているよりずっと深く、ずっと熱い。

これはただのアニメじゃない。ひとりの少女が、ひとつの時代を駆け抜ける“伝説のドキュメント”だ。

『ウマ娘 シンデレラグレイ』制作会社まとめ

ここまでたっぷりと語ってきた『ウマ娘 シンデレラグレイ』ですが、その根幹を支えるのが、制作会社・CygamesPicturesの存在です。単なる“アニメを作る場所”ではなく、“物語を本気で届ける場所”として、このスタジオが果たしている役割は計り知れません。

CygamesPicturesは2016年、ゲーム会社Cygamesの直轄スタジオとして設立されました。以来、『プリティーダービー』『グラブル』『シャドバ』など、Cygamesが手がけるIPをアニメとして“最高のかたち”で世に出す使命を持ち、着実に実績を積み上げてきました。

『シンデレラグレイ』では、この“社内完結型”の利点が最大限に活かされています。原作との連携、キャラ解釈、演出方針、すべてが一本の線で繋がっている。その結果として、あの精緻で熱量に満ちた映像が生まれているわけです。

制作陣も実力派揃いで、監督の伊藤祐毅・みうらたけひろコンビ、キャラデザの宮原拓也・佐々木啓悟、音楽の川井憲次など、アニメファンなら「うわ、これは間違いない」と思える布陣ががっちり固めています。そして何より、全員が“オグリキャップの物語を信じている”。この信頼と熱意が、画面からびしびし伝わってくるのが本当にすごい。

繰り返しになりますが、『シンデレラグレイ』は単なるアニメ化ではありません。“伝説を語る覚悟を持った人たちによる、物語の再構築”です。その覚悟に、僕たちは胸を打たれるし、心が動かされる。

だから筆者は声を大にして言いたい。この作品は、アニメが好きな人にも、競馬に興味がなかった人にも、“いま観てほしい”作品です。オグリキャップという名の灰色のシンデレラが、どこまで駆け抜けていくのか──この奇跡の続きを、ぜひ一緒に目撃してほしい。