『無職転生』のパウロは、物語の結末こそ共通ですが、アニメは感情を凝縮し、漫画は経緯を段階的に描いています。
具体的には、家族会議、ミリスでの親子喧嘩、転移迷宮での最期において、場面の区切り方、説明の量、視点の置き場所が異なります。
※この記事では、パウロや転移迷宮編の重要な展開に触れています。
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『無職転生』パウロのアニメと漫画の違いとは?
結論から言えば、アニメ版と漫画版で、パウロの基本設定や主要な行動が大幅に変更されたわけではありません。
違いが大きいのは、「何を省略したか」だけではなく、限られた尺やページを誰の感情に使ったかです。
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アニメ版は、理不尽な孫の手さんによる原作小説を基にスタジオバインドが制作し、パウロ役を森川智之さんが担当しています。
漫画版は、原作を理不尽な孫の手さん、キャラクター原案をシロタカさん、作画をフジカワユカさんが担当するコミカライズです。つまり、漫画がアニメの原作なのではなく、アニメと漫画の双方が小説を別々の方法で再構成していると理解する必要があります。
パウロの主要場面を対応させると、次のようになります。
パウロの主要場面 アニメ版 漫画版の主な対応範囲 比較の要点
リーリャの妊娠と家族会議 第1期第4話「緊急家族会議」 第1巻第5話、第2巻第6話 アニメは家庭崩壊の危機から時間経過までを一気に描く
ルーデウスとの離別 第4話終盤〜第5話冒頭 第2巻第6話「離別」 漫画は家族会議の結果と旅立ちを章として分ける
ミリスでの親子喧嘩 第16話「親子げんか」 第7巻第33話〜第35話 アニメは再会から衝突までの落差を短時間で強調
パウロとの和解 第17話「再会」 第7巻第35話〜第36話 アニメはノルンの視点や沈黙を映像で補う
転移迷宮への合流 第2期第20話〜第21話 第21巻〜第22巻、第100話〜第106話前後 漫画は迷宮攻略の準備と手順を細かく区切る
ヒュドラとの決戦 第2期第22話「親」 第23巻、第107話〜第111話 アニメ1話分を漫画は複数章に分けて描く
パウロ死亡後のルーデウス 第2期第23話「帰ろう」 第23巻終盤〜第24巻 漫画は喪失後の停滞をページ数を使って追う
アニメ第4話は漫画第5話から第6話、第16話から第17話は漫画第7巻の第33話から第36話付近に対応します。
転移迷宮編では、漫画第23巻がパウロとルーデウスの決戦を扱い、第24巻が喪失後のルーデウスを中心に描いています。第23巻は2025年8月22日、第24巻は2026年2月24日に発売されました。
ここで注目したいのは、単純な「アニメは省略が多い、漫画は詳しい」という関係ではないことです。
アニメにはアニメで追加された視線、沈黙、移動の映像があります。漫画には漫画で、章をまたいで感情を整理する時間があります。
同じ出来事を描きながら、パウロへ近づく道筋が違うんです。
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家族会議のパウロはアニメ第4話と漫画第1巻・第2巻でどう違う?
アニメ第4話「緊急家族会議」は、ゼニスに続いてリーリャの妊娠が判明し、その父親がパウロだったことでグレイラット家が揺れるエピソードです。
公式あらすじでも、ゼニスの懐妊から約ひと月後にリーリャの妊娠が発覚し、ルーデウスが家族の危機へ介入する流れが示されています。
漫画版では、この一連の出来事が第1巻第5話「家族会議と伸び悩み」と、第2巻第6話「離別」にまたがります。
アニメは一つの放送回の中で家庭問題とルーデウスの成長停滞を接続し、漫画は家族会議と離別を別の章として読ませるのが大きな構成差です。
アニメ第4話はパウロの失敗を逃げ場なく見せる
アニメ版では、ゼニスの喜びに満ちた空気が、リーリャの告白によって急速に冷えていきます。
声が止まり、家族の動きが止まり、パウロへ視線が集まる。説明されなくても「この家の中心にいる男が、家を壊しかけた」と分かる演出です。
森川智之さんの演技も、パウロの立場を単純な悪役にはしていません。
言い訳をしようとする軽さ、ゼニスの怒りを前にした焦り、ルーデウスの機転へ頼ってしまう情けなさが、声色の変化として連続します。
ただし、弱さが見えることと、行動が許されることは別です。
パウロはゼニスとの約束を破り、妻とリーリャの双方へ大きな負担を背負わせました。アニメはその事実を、家庭内の息苦しい空気によって短時間で突きつけます。
漫画版は家族会議から離別までの因果が追いやすい
漫画版では、読者がゼニス、リーリャ、パウロ、ルーデウスの表情を順番に確認できます。
誰が誰を見ているのか。誰が言葉を飲み込み、誰が話の流れを変えようとしているのか。コマを戻せるため、家庭内の力関係が整理しやすい構成です。
また、家族会議の後に第6話「離別」が置かれることで、パウロがルーデウスを家から出す判断にも一つの章が与えられます。
アニメでは、妹たちの誕生やルーデウスの修行、シルフィとの関係をテンポよく進めた後、パウロの強引な判断によってロアへ送られます。
漫画では章が切り替わるため、「家庭を守れなかった父親が、今度は息子の将来を一方的に決める」という連続性が見えやすいのです。
筆者には、漫画版の章構成そのものがパウロの矛盾を示しているように感じられます。
家族会議では責任を取らされる側だったのに、離別では自分が決定権を握る。傷つけられる立場を経験しても、すぐに他者の気持ちを聞ける人間にはなれない。
そこが妙に生々しいんですよね。
リーリャとパウロの過去はアニメで圧縮されている
リーリャとパウロが過去に同じ剣術道場にいたことや、リーリャがパウロへ複雑な感情を抱くようになった経緯は、アニメでもルーデウスのモノローグを通じて触れられます。
ただし、アニメ第4話は家族会議、剣術三大流派の説明、妹たちの誕生、ルーデウスの伸び悩みまでを扱うため、二人の過去は短く圧縮されています。
漫画や原作では、説明を読み返すことで、リーリャが単にその場の勢いだけで行動したのではなく、過去から続く感情を抱えていたことを確認できます。
もちろん、背景を知ってもパウロの責任が消えるわけではありません。
むしろ経緯を詳しく読むほど、パウロの行動が偶発的な一度の失敗ではなく、過去の未熟さを清算できないまま家庭へ持ち込んだ結果だと見えてきます。
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ミリスでのパウロとルーデウスの再会はアニメ第16話・第17話と漫画第7巻でどう違う?
ミリスでの再会は、アニメ第16話「親子げんか」と第17話「再会」、漫画第7巻の第33話「再会の日」から第36話「やり直し」に対応します。
アニメは再会、衝突、後悔、和解を2話に分け、漫画は4つの章題によって段階を明確にしています。
アニメ第16話は再会の喜びを意図的に短くする
第16話でルーデウスは、誘拐された子どもを追った先でパウロと再会します。
しかし、父親は以前のような陽気な姿ではありません。
フィットア領転移事件後、パウロはノルンと共に生き延び、フィットア領捜索団を率いて行方不明者を捜していました。ゼニス、リーリャ、アイシャらの居場所が分からず、長期間の捜索で心身ともに追い詰められています。
ルーデウスは魔大陸からエリスを守りながら帰還していましたが、パウロはその事情を十分に聞きません。
息子が無事だった喜びよりも、「優秀なルーデウスなら、もっと多くの被災者を助けられたのではないか」という期待と失望をぶつけます。
アニメでは、再会直後の会話が険悪になるまでの時間が短く、視聴者もルーデウスと同じ速度で期待を裏切られます。
嬉しい再会になるはずだった。
その空気が、ものの数分で殴り合いへ変わる。この落差が第16話の痛みです。
漫画第33話から第35話は衝突の原因を分解する
漫画版では、第33話「再会の日」、第34話「親子喧嘩」、第35話「父と妹」と章題が分かれています。
再会した日、喧嘩そのもの、そしてパウロとノルンという順番で焦点が移るため、読者は感情の原因を分解して受け取れます。
とくに「父と妹」という章が独立している点は重要です。
ノルンにとって、パウロは転移事件後に自分を守り続けた父親です。その父親を突然現れた兄が傷つけたように見えれば、ルーデウスへ反発するのは自然でしょう。
ルーデウスから見れば理不尽な父親でも、ノルンから見れば唯一そばにいてくれた保護者です。
同じパウロが、見る人物によって違う姿になる。この構造はアニメにもありますが、漫画では章題によってより明確に整理されています。

アニメ第17話はノルンの視点を映像として前面に出す
第17話「再会」では、パウロがギースに諭され、自分がルーデウスへぶつけた言葉の問題に気づきます。
公式あらすじでも、傷心するルーデウスと、己の過ちに気づいて再び話そうとするパウロの双方が示されています。
アニメ版でとくに印象的なのは、ノルンから見た転移後の日々を冒頭の映像へ組み込み、パウロがどれほど疲弊していったのかを説明台詞だけに任せなかった点です。
パウロは最初から酒に溺れていたわけではありません。
娘を守り、捜索団を動かし、助けを求める人々へ対応しながら、少しずつ余裕を失っていきました。アニメはその時間を短い映像の積み重ねで見せます。
だからといって、ルーデウスを責めた行為が正当化されるわけではありません。
ただ、「理不尽な父親が急に反省した」のではなく、「壊れかけていた人間が、ようやく自分の誤りを見る余裕を取り戻した」と理解しやすくなっています。
漫画第36話は和解を“やり直し”として区切る
漫画版で和解にあたる章の題名は「やり直し」です。
これは、二人が過去の言動を帳消しにしたことを意味しません。
パウロが謝ったから傷が消えるわけでも、ルーデウスが受け入れたから正しい父親になれるわけでもない。壊れた関係を、壊れた事実ごと持ち直そうとする章です。
アニメでは、森川智之さんの声の震え、視線を合わせられない動き、抱き合うまでの沈黙が和解を支えます。
漫画では「再会の日」「親子喧嘩」「父と妹」「やり直し」と章を進むことで、和解へ到達するまでの論理が見えます。
筆者としては、ここに両媒体の差が最も美しく表れていると感じます。
アニメは「ようやく抱き合えた」という瞬間を強くする。
漫画は「なぜ抱き合う必要があったのか」を段階的に理解させる。
どちらか一方が正解なのではなく、両方を見ることで感情と理由がつながります。
再会当日の別行動はテレビ本編から番外編へ移された
アニメ第16話では、ルーデウスとパウロが再会している間、エリスとルイジェルドが何をしていたのかは描かれませんでした。
その別行動は、Blu-ray収録のテレビ未放送エピソード「エリスのゴブリン討伐」として独立しています。公式も、第16話と同じ日に起きた出来事を本編とは別に映像化したと説明しています。
この整理によって、第16話はパウロとルーデウスの衝突へ集中できました。
つまりアニメ版の省略は、情報を捨てたというより、同時進行する出来事を別のエピソードへ移し、親子喧嘩の密度を上げた編集だと言えます。
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転移迷宮編のパウロはアニメ第20話〜第23話と漫画第22巻〜第24巻でどう違う?
転移迷宮編では、アニメと漫画の構成差がさらに明確になります。
アニメ第2期は、第20話「迷宮入り」、第21話「第六階層の魔法陣」、第22話「親」、第23話「帰ろう」と進みます。
漫画版では、第22巻に迷宮入りから攻略、第23巻に守護者との戦闘とパウロの喪失、第24巻にルーデウスの深い落ち込みとロキシーの決断が配置されています。
アニメ第20話は成長した親子の再会を短い会話で示す
第20話で、迷宮都市ラパンへ到着したルーデウスとエリナリーゼは、ギースを通じてパウロたちと合流します。
ゼニスを救えず憔悴しているパウロに対し、ルーデウスはかつてのミリスでのように反発しません。
まず状況を聞き、迷宮攻略の方法を整理しようとします。
公式あらすじでも、疲労するパウロへルーデウスが穏やかに声をかけ、ゼニス救出について話し合う流れが示されています。
ここで描かれているのは、同じ失敗を繰り返さなかった親子です。
ミリスでは、パウロがルーデウスの事情を聞かず、ルーデウスも怒りのまま応じました。
ラパンでは、ルーデウスが父親の疲労を見て、まず話を聞く。パウロも息子の知識と判断を認め、攻略の中心へ迎え入れます。
アニメはこの変化を、長い説明ではなく会話の温度で示しています。
漫画第22巻は迷宮攻略を手順として確認できる
漫画第22巻には、第102話「迷宮入り」、第103話「ロキシーの夢」、第104話「不屈の魔法使い」、第105話「トントン拍子」、第106話「第六階層の魔法陣」が収録範囲に含まれます。
アニメ第20話から第21話に相当する出来事を、漫画は複数の章へ分けています。
そのため、ロキシーがどのような状態で迷宮をさまよっていたのか、ルーデウスたちが攻略情報をどう利用したのか、救出後に態勢をどう整えたのかを追いやすくなっています。
パウロについても、単に前線で剣を振るうだけではありません。
誰を先頭に置くか、ルーデウスの魔術をどう使うか、仲間の消耗をどう抑えるか。元「黒狼の牙」のリーダーとして、状況を判断する姿が章をまたいで描かれます。
アニメでは攻略の速度が実感しやすく、漫画では攻略の理由が把握しやすい。
転移迷宮編では、この違いが戦闘の理解度へ直接つながります。
アニメ第22話「親」は漫画第23巻の複数章を凝縮している
アニメ第22話「親」は、最終階層への到達、魔力結晶に閉じ込められたゼニスの発見、ヒュドラとの初戦、作戦の立て直し、再戦、パウロの死までを一つの放送回に収めています。
漫画第23巻では、同じ流れが第107話「転移迷宮の守護者」、第108話「作戦会議」、第109話「死闘」、第110話「喪失」、第111話「親」と段階的に分けられています。
ここは、比較記事として最も重要な差です。
アニメでは、作戦を理解した直後に戦闘が再開されます。
パウロが首を切り落とし、ルーデウスたちが切断面を処理し、仲間が残る首を抑える。画面が止まらないため、作戦が崩れれば誰かが命を落とす危険を身体的に感じられます。
漫画では「作戦会議」が独立した章になっています。
読者は戦闘前に役割を確認できるため、再戦で誰が何を成功させたのかを追いやすい構造です。
パウロの強さも、アニメでは速度として見え、漫画では判断の積み重ねとして見えます。
剣神流、水神流、北神流を使い分けるという設定を知っていても、静止した説明だけでは実戦の凄みを想像しにくいものです。
アニメでは、巨大な首へ踏み込み、攻撃をかわし、ルーデウスが動くための空間を作る一連の動きによって、パウロが総合力に優れた剣士だと伝わります。
漫画では、一つの構え、一度の回避、仲間との位置関係を止めて確認できます。
どちらもパウロの強さを描いていますが、アニメは「速い」、漫画は「うまい」という印象が残りやすい。筆者にはそう感じられました。

パウロの最期はアニメで予告不能の事故として迫る
ヒュドラとの再戦で、ルーデウスたちは首を順番に処理し、勝利へ近づきます。
しかし、最後の攻撃に対応しきれず、ルーデウスは左腕を失い、パウロは息子を守って命を落とします。
アニメ版では、それまで連続していた動きが突然止まります。
直前まで指示を出し、剣を振り、息子と連携していた人物が、次の瞬間には言葉を失っている。
視聴者が出来事を整理する前に映像が進むため、ルーデウスと同じく「何が起きたのか理解したくない」という感覚へ巻き込まれます。
これは本作のアニメ演出が生んだ効果です。
すべての映像作品で同じ受け止め方になるわけではありませんが、第22話はパウロの死へ長い説明を挟まず、戦闘の勢いをそのまま喪失へ接続しています。
漫画版では、第109話「死闘」の後に第110話「喪失」が置かれます。
章題が変わることで、読者は「戦いが終わった」のではなく、「失ったものを確認する時間に入った」と理解します。
ページを戻れば、少し前まで生きていたパウロを見られる。
でも、結果は変えられない。
漫画には、その残酷な距離があります。
アニメ第22話の無言の帰還は映像独自の追加表現
第22話の終盤では、ゼニスを連れて帰還した一行をリーリャたちが迎えます。
最初はゼニスの救出を喜びかけながら、パウロがいないことへ気づく。アニメはこの変化を、詳しい説明台詞ではなく、人物の表情と沈黙で描きます。
また、パウロを弔った記憶は炎のイメージとともにルーデウスへよみがえります。
時系列を逐一説明するより、喪失した人間の記憶が断片的に戻ってくる形へ組み替えた演出です。
漫画版では、第111話「親」によって、パウロを弔い、ゼニスを迷宮から連れ出し、彼女が以前の状態ではないと知る過程を順番に追えます。
つまり、アニメは出来事を記憶として見せ、漫画は出来事を経過として見せる。
この差はかなり大きいです。
漫画第24巻はパウロを失った後の停滞を長く描く
アニメ第23話「帰ろう」では、パウロの死とゼニスの状態を受け入れられないルーデウスへ、ロキシーが寄り添います。
公式あらすじでも、左腕とパウロの命を失ったこと、ゼニスが心を失ったような状態にあること、後悔と絶望に沈むルーデウスへロキシーが声をかけることが示されています。
漫画第24巻も同じ流れを扱いますが、ルーデウスが食事を取れず、歩くこともできず、無力感の中へ沈んでいく状態が巻の中心に置かれています。
KADOKAWAの公式紹介でも、動けなくなったルーデウスを見たロキシーが大きな決断をすることが紹介されています。
アニメでは放送時間の中で、喪失から次の選択へ進まなければなりません。
漫画はページをめくる読者の速度に任せ、何もできない時間を長く保てます。
パウロの死そのものは第23巻の出来事ですが、その死がどれほど重かったのかは、第24巻まで読んで初めて実感できる構成です。
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「アニメで感動したけど、原作を読んで初めて“本当の意味”に気づいた」
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パウロはアニメと漫画のどちらで印象が変わる?
アニメと漫画でパウロの性格が別人になるわけではありません。
変わるのは、読者や視聴者がパウロを理解する順番です。
アニメ版では、次の要素が前面に出ます。
- 森川智之さんの声による強がり、焦り、疲労
- 剣を振る速度と戦場での判断力
- 会話が途切れた時の沈黙
- ノルンやリーリャがパウロを見る視線
- 動いていた人物が突然いなくなる喪失
漫画版では、次の要素を確認しやすくなっています。
- 家族会議から離別へ続く因果関係
- 再会、喧嘩、ノルンの立場、和解という段階
- 迷宮攻略における作戦と役割分担
- パウロの死からルーデウスが崩れるまでの時間
- セリフの前後に置かれた表情や視線
筆者としては、パウロを「感情的な人物」として先に知りたいならアニメ、「なぜ同じ失敗を繰り返したのか」を整理したいなら漫画が向いていると感じます。
ただし、これは媒体一般の優劣ではなく、本作における演出と構成を比較した場合の話です。
パウロの人物像を変えるのは改変より“時間の配分”
今回比較して見えてきたのは、パウロの印象を最も変えているのが、セリフの追加や削除だけではないことです。
重要なのは、一つの感情へどれだけ時間を渡したかです。
アニメ第17話は、ノルンの視点とパウロの疲弊を映像へまとめ、和解の瞬間に時間を使いました。
漫画第7巻は、再会、親子喧嘩、父と妹、やり直しを別章にし、関係修復の段階へ時間を使いました。
アニメ第22話は、作戦会議からパウロの死までを一気に進め、予想できない喪失へ時間を使いました。
漫画第23巻は、守護者、作戦会議、死闘、喪失、親と章を分け、何が成功し、どこで取り返しがつかなくなったのかを理解する時間に使いました。
パウロは剣士として判断が速い人物です。
それなのに、夫や父親として正しい言葉を選ぶ時だけ、ひどく遅い。
アニメはその「速さと遅さ」を動きと沈黙で見せ、漫画は章と章の間で見せます。
この人物に二つの媒体が合う理由は、そこにあるのだと思います。
原作小説を読むとパウロの認識のずれがさらに分かる
アニメと漫画の比較だけでもパウロの矛盾は見えますが、心理の根拠を深く知るなら原作小説の情報も欠かせません。
小説では、ルーデウスの内面、パウロの置かれた状況、周囲の人物による評価が文章として補われます。
アニメでは沈黙へ置き換えられた部分、漫画では表情へ変換された部分が、言葉として残っていることがあります。
ただし、小説の心理説明が唯一の正解というわけでもありません。
映像でパウロの声を聞いた後に文章へ戻ると、強がりの裏にある感情を想像しやすくなります。
漫画で視線の向きを確認した後に小説へ戻ると、誰へ向けた言葉だったのかが違って見える。
原作を先に読めば、アニメで省略された説明を知った状態で森川智之さんの演技を受け取れます。
反対にアニメから原作へ進めば、あの沈黙の中で何が語られていたのかを確かめられます。
パウロのように、本音と発言が一致しにくい人物ほど、この往復が効くんですよね。
まとめ|『無職転生』パウロのアニメと漫画は場面構成が違う
『無職転生』のパウロは、アニメと漫画で基本設定や結末が大きく変更されているわけではありません。
主な違いは、アニメが出来事を短い時間へ凝縮し、漫画が複数の章へ分けて因果関係を整理していることです。
家族会議は、アニメ第4話に対して漫画第1巻第5話から第2巻第6話へまたがります。
ミリスでの親子喧嘩と和解は、アニメ第16話・第17話に対して漫画第7巻第33話から第36話へ分けられています。
転移迷宮の決戦は、アニメ第22話が最終階層への到達からパウロの死までを一気に描く一方、漫画第23巻は「転移迷宮の守護者」「作戦会議」「死闘」「喪失」「親」と段階を分けています。
アニメでは声、動き、沈黙、音楽によってパウロの感情が迫ってきます。
漫画では章題、コマ、ページの余白を通じて、なぜその言動に至ったのかを確認できます。
パウロは、最後に息子を守ったから過去の失敗が消える人物ではありません。
反対に、家族を何度も傷つけたから、最後の行動まで偽物になる人物でもない。
アニメで彼の生きた速度を受け取り、漫画で立ち止まって行動の理由を拾う。
二つの媒体を往復することで、パウロは「問題のある父親」や「息子を守った英雄」という一言では閉じられない人物になります。
よくある質問
『無職転生』のパウロはアニメと漫画で性格が違う?
基本的な性格や主要な行動は共通しています。
アニメでは声や動きによって感情の激しさが伝わり、漫画では出来事が複数の章へ分けられるため、葛藤の原因を整理しやすいという違いがあります。
パウロとルーデウスの親子喧嘩はアニメ何話・漫画何巻?
アニメでは第1期第16話「親子げんか」から第17話「再会」にかけて描かれます。
漫画では第7巻の第33話「再会の日」から第36話「やり直し」付近が主な対応範囲です。
パウロが死亡するのはアニメ何話・漫画何巻?
アニメでは第2期第22話「親」で、ヒュドラとの戦闘とパウロの最期が描かれます。
漫画では第23巻の第107話から第111話にかけて、守護者との遭遇、作戦会議、死闘、喪失、その後の処理が段階的に描かれています。
漫画第24巻にもパウロは登場する?
第24巻の中心は、パウロを失った後のルーデウスとロキシーです。
パウロ本人の新たな活躍というより、彼の死がルーデウスへ残した影響を描く巻と考えると分かりやすいでしょう。
執筆:相沢 透(あいざわ・とおる)



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