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『夜桜さんちの大作戦』作者は誰?経歴や過去作品、作風を紹介

桜の花びらが舞う夜の街を背景に、漫画の原稿用紙とペン、海洋生物の研究ノート、スパイを連想させる小道具が並ぶ創作風景 夜桜さんちの大作戦
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『夜桜さんちの大作戦』の作者は権平ひつじ(ごんだいら・ひつじ)先生。北海道大学水産学部出身の漫画家です。

家族を失った朝野太陽が、夜桜六美と出会い、もう一度誰かを守るために立ち上がる。その物語を描いた作者は、かつて海洋学者を夢見ていた人物でした。

2011年の新人賞受賞から『ポロの留学記』を経て、全29巻の代表作を生み出すまで。権平先生の経歴と作品をたどると、戦いの奥に隠された「家族」と「強さ」への独特な視線が見えてきます。


  1. 『夜桜さんちの大作戦』作者・権平ひつじ先生とは?プロフィールと代表作
    1. 権平ひつじ先生の名前・出身地・学歴
    2. 『夜桜さんちの大作戦』はいつ始まり、いつ完結した?
    3. アニメ化後も『夜桜さんちの大作戦』は展開中
  2. 権平ひつじ先生の経歴は?北海道大学から漫画家になった理由
    1. 大学1年生で『IBIS』を投稿し、新人賞を受賞
    2. 新人賞の編集部講評が示す、権平ひつじ先生の才能と課題
    3. 卒業研究ではスサビノリのストレス耐性を調べていた
  3. 権平ひつじ先生の過去作品一覧!『ポロの留学記』までの歩み
    1. 『IBIS』から『夜桜さんちの大作戦』までの作品年表
    2. 新人賞受賞作『IBIS』には、すでに家族愛が描かれていた
    3. 『幻獣医トテク』では科学知識をファンタジーへ変換
    4. 『ポロの留学記』はどんな作品?主人公は魔界の王子
  4. 『夜桜さんちの大作戦』第8巻に見る作風の特徴とは?
    1. 第8巻は2021年4月30日発売!「夜桜前線」と「開花」を収録
    2. 第63話「開花」と第65話「ババ抜き」が並ぶ意味
    3. 夜桜家のキャラクターは「専門性の違い」で動く
  5. 考察:権平ひつじ先生の作品に共通する「強さ」の本当の意味
    1. 『ポロの留学記』と『夜桜さんちの大作戦』は主人公の出発点が逆
    2. 第8巻の「開花」「お花見」「葉桜の開花」に隠された構造
    3. 北海道大学での研究経験は「世界のルール」を描く力になったのか
    4. 今後の権平ひつじ先生は何を描くのか
  6. まとめ:『夜桜さんちの大作戦』作者・権平ひつじ先生の魅力
  7. よくある質問
    1. 『夜桜さんちの大作戦』の作者の名前は何と読む?
    2. 権平ひつじ先生の出身大学はどこ?
    3. 『夜桜さんちの大作戦』以前の連載作品は?
    4. 『夜桜さんちの大作戦』の漫画は完結している?
    5. 『夜桜さんちの大作戦』第8巻はいつ発売された?
    6. 『夜桜さんちの大作戦』のアニメ第2期は放送されている?

『夜桜さんちの大作戦』作者・権平ひつじ先生とは?プロフィールと代表作

権平ひつじ先生の名前・出身地・学歴

『夜桜さんちの大作戦』を描いたのは、北海道出身の漫画家・権平ひつじ先生です。

集英社の公式書誌情報にも著者名が記載されており、2019年から2025年まで「週刊少年ジャンプ」で同作を連載しました。

まずは、作者の基本情報を整理しておきましょう。

項目 プロフィール
筆名 権平ひつじ
読み方 ごんだいら・ひつじ
出身地 北海道
最終学歴 北海道大学水産学部
卒業年月 2014年3月
新人賞受賞 2011年『IBIS』で第43回JUMPトレジャー新人漫画賞佳作
本誌連載デビュー 2017年『ポロの留学記』
代表作 『夜桜さんちの大作戦』
代表作の連載期間 2019年~2025年
代表作の単行本 全29巻

北海道大学が2022年11月17日に公開したインタビューによると、権平先生は子どもの頃から生き物が好きで、もともとは海洋学者を目指していました。

とくに深海生物への関心が強く、コウモリダコの姿や学名に魅力を感じていたそうです。

一見すると、スパイアクション漫画とは縁遠い経歴に思えます。

けれど、現実の生物が持つ奇妙な能力や、自然界の複雑な仕組みに心を奪われた少年が、やがて超人的な能力を描く漫画家になる。

その流れを知ると、権平先生の奇想天外な発想にも、一つの連続性が感じられます。

『夜桜さんちの大作戦』はいつ始まり、いつ完結した?

『夜桜さんちの大作戦』は、「週刊少年ジャンプ」2019年39号から連載が始まりました。

主人公は、家族を事故で失った高校生・朝野太陽。極度の人見知りである彼が、幼なじみの夜桜六美を通じてスパイ一家に巻き込まれていく物語です。

六美は、代々続くスパイ一家・夜桜家の当主でした。

しかも長男の夜桜凶一郎は、妹を守ろうとするあまり、太陽を危険視しています。

そんな異常な環境の中で、太陽は六美を守るために夜桜家の一員となり、スパイとして成長していきます。

この作品が興味深いのは、主人公の戦う理由が最初から明確なことです。

太陽は最強の称号を求めて戦うわけではありません。

自分のそばにいてくれた六美を失いたくない。その個人的な願いが、やがて夜桜家全体を巻き込む壮大な物語へと成長していくのです。

連載は2025年1月20日発売の「週刊少年ジャンプ」8号、第258話「今日も夜桜さんちは大作戦」で完結しました。

単行本は全29巻で、最終巻は2025年3月4日に発売されています。

約5年半にわたる長期連載を、物語の結末まで描き切ったことになります。

僕は、この最終話のタイトルにも権平先生らしさを感じます。

数々の危機を乗り越えても、夜桜家の物語は特別な勝利だけで定義されるわけではない。

日々の暮らしそのものが、彼らにとって終わることのない大作戦なのかもしれません。

アニメ化後も『夜桜さんちの大作戦』は展開中

原作漫画は完結していますが、テレビアニメの展開は続いています。

第1期は2024年に放送され、第2期は2026年4月12日に放送が始まりました。

さらにアニメ公式サイトによると、第2期の第2クールが2026年10月11日からMBS・TBS系全国28局ネットで放送されています。

2026年10月19日時点では、原作完結後もアニメを通じて夜桜家の物語に触れられる状況です。

原作を読み終えた読者には、アニメがどの場面を強調し、キャラクターの感情をどう表現するのかという新しい楽しみもあります。

とくに権平先生の作品は、派手なアクションと静かな家族の時間が隣り合っています。

漫画では数コマで表現されていた間や表情が、アニメの声や動きによってどう変化するのか。そこには、原作とは異なる発見があるでしょう。



権平ひつじ先生の経歴は?北海道大学から漫画家になった理由

大学1年生で『IBIS』を投稿し、新人賞を受賞

権平先生は、最初から漫画家になるつもりで大学へ進学したわけではありません。

北海道大学の本人インタビューでは、入学当初は漫画を趣味で描いていたものの、職業にできるとは考えていなかったことが語られています。

転機は大学1年生の後期でした。

自分に可能性があるかどうか、一度試してから判断しようと考え、少年ジャンプの月例新人賞に作品を応募したのです。

それが『IBIS』でした。

2011年、第43回JUMPトレジャー新人漫画賞で佳作を受賞。19歳での初投稿、初受賞でした。

受賞を知らせる編集部からの電話にも、すぐには気付かなかったといいます。

東京の市外局番にも詳しくなく、当初は知らない番号からの電話だと思っていたというエピソードが、北海道大学のインタビューに残っています。

ここで僕が引かれるのは、才能への確信ではなく、迷いから始まった経歴であることです。

漫画家になるという揺るぎない決意が先にあったのではない。

一度だけ試してみる。その選択が、後に長期連載を生み出す道の入口になりました。

新人賞の編集部講評が示す、権平ひつじ先生の才能と課題

さらに興味深いのが、当時のジャンプ編集部による評価です。

集英社の「少年ジャンプ漫画賞ポータル」では、第43回JUMPトレジャー新人漫画賞で『IBIS』が受けた講評が公開されています。

編集部は、若い段階での構成力と、生き生きとしたキャラクター表現を評価していました。

一方で、コマ数の多さや画力には改善の余地があるとも指摘しています。

つまり、権平先生は新人時代から、次の二つの特徴を併せ持っていたことになります。

物語を組み立てる力と、人物に生命感を与える力は評価されていた。しかし、その魅力を漫画の画面上で整理して伝える技術には課題があった。

この講評を、2019年以降の『夜桜さんちの大作戦』と比較すると面白いものがあります。

夜桜家は、凶一郎、二刃、辛三、四怨、嫌五、六美、七悪と、多数の個性的な人物が登場する作品です。

しかも、それぞれが異なる能力や性格を持ち、日常回と戦闘回では見せる表情も変わります。

こうした群像劇を長期間展開できたことは、初期から評価されていたキャラクター造形や構成力が、連載作品の中で発揮された例と考えられます。

もちろん、新人賞時点の画力やコマ数の課題が、どの段階でどれほど改善されたかは、実際の原稿を比較しなければ断定できません。

それでも、初期の長所だった「人物を生き生きと描く力」が、その後の代表作の中心的な魅力になったことは見逃せません。

編集部が2011年に見出した才能の方向性が、2019年から始まる大きな作品へつながっている。

そう考えると、一本の新人賞受賞作にも、作者の未来がわずかに映り込んでいたように感じます。

卒業研究ではスサビノリのストレス耐性を調べていた

漫画家としての道が開け始めても、権平先生は大学での研究を続けました。

2014年3月に北海道大学水産学部を卒業し、卒業後も約2か月間、研究活動を手伝っています。

卒業研究のテーマは、海苔の原料となるスサビノリのストレス耐性に関わる遺伝子でした。

水温や栄養条件などの環境変化によって、遺伝子の発現にどのような影響が生じるのかを調べていたそうです。

研究では、DNAを細胞へ導入する実験やPCR、電気泳動といった手法も使用していました。

現象を観察し、仮説を立て、実験によって確認する。

そうした研究生活と、漫画の世界を構築する作業は、決して同じではありません。

ただ、目に見える結果の裏側にある仕組みを想像するという点では、共通する思考があるように思います。

そして北海道大学のインタビューでは、研究室の教員や周囲の人々が、漫画制作との両立を支えてくれたことも語られています。

授業前の時間にネームを描いたり、研究室でも原稿制作を進めたりしていたというエピソードからは、研究者の道と漫画家の道が重なっていた時期の姿が浮かびます。

権平先生は大学時代、自分よりも生き物に詳しい人々と出会い、それぞれの分野に優れた人がいることを実感したとも述べています。

その経験が、現在の仕事に向き合う姿勢へ影響したそうです。

ここは、後の夜桜家を考えるうえでも気になる部分です。

一人の万能な人間ではなく、異なる専門性を持つ人々が集まることで、大きな力が生まれる。

あのスパイ一家の構造と、どこか響き合っている気がするのです。

※画像はAIによるイメージ


権平ひつじ先生の過去作品一覧!『ポロの留学記』までの歩み

『IBIS』から『夜桜さんちの大作戦』までの作品年表

権平先生は『夜桜さんちの大作戦』以前にも、複数の読み切りと連載作品を発表しています。

主な作品を発表年と掲載媒体、特徴で整理すると次のとおりです。

作品名 発表年・掲載媒体 特徴
『IBIS』 2011年・JUMPトレジャー新人漫画賞 コウノトリの仕事と家族愛を描いた新人賞受賞作
『チャコの脱獄論』 2011年・少年ジャンプNEXT! 読み切り掲載デビュー作
『機械仕掛けの神父様』 2012年・少年ジャンプNEXT! 初期の読み切り作品
『こっくり屋ぁい!』 2013年・週刊少年ジャンプ12号 狐のこっくりさんと不良少年の友情
『幻獣医トテク』 2015年・週刊少年ジャンプ39号 第10回金未来杯グランプリ受賞作
『ポロの留学記』 2017年・週刊少年ジャンプ 魔界の王子を主人公にしたコメディ。全2巻
『夜桜さんちの大作戦』 2019~2025年・週刊少年ジャンプ スパイ一家の絆を描く代表作。全29巻

こうして見ると、権平先生の作品には、人間と異なる存在や、特殊な能力を持つ人物が繰り返し登場しています。

ただし、その人物が何を破壊できるかという部分だけに注目しても、作者の特徴は十分には見えてきません。

むしろ重要なのは、彼らが誰と出会い、どんな関係を築こうとするのかという点でしょう。

新人賞受賞作『IBIS』には、すでに家族愛が描かれていた

『IBIS』は、2011年に佳作を受賞した権平先生の初投稿作品です。

北海道大学のインタビューに付された解説によると、空を飛んで子どもを届ける「コウノトリ」の仕事を題材に、家族愛が描かれています。

注目したいのは、作者が最初に評価された物語の段階で、すでに家族という主題が存在していたことです。

『夜桜さんちの大作戦』では、家族を失った太陽が新たな家族に迎え入れられます。

一方、『IBIS』は子どもを届ける存在を通じて、人と人が家族になることを描いています。

二作品の具体的な筋立ては異なりますが、家族という関係が生まれる場面への関心には、通じるものが感じられます。

もちろん、作者が当時から長期的な創作テーマを意識していたかは分かりません。

それでも、後の代表作を知ったうえで『IBIS』を振り返ると、権平先生の物語に繰り返し現れる問いが、初期から存在していたように見えるのです。

人は、何によって誰かの家族になれるのか。

その問いの始まりが、すでにここにあったのかもしれません。

『幻獣医トテク』では科学知識をファンタジーへ変換

2015年には、読み切り『幻獣医トテク』が「週刊少年ジャンプ」39号に掲載され、第10回金未来杯でグランプリを受賞しました。

この作品には、大学で生物学を学んだ権平先生ならではの遊び心があります。

北海道大学のインタビューによると、作中の架空の生物には学名が設定されていました。

人狼やスライム、ドラゴンといった存在に、現実の生物分類を思わせる名前を与えていたのです。

ここが面白い。

架空の生物に学名を与えたところで、その生物が現実に存在するようになるわけではありません。

しかし、学問の形式を借りることで、架空の世界にも分類体系や自然法則が存在するかのような奥行きが生まれます。

ただ怪物を描くのではなく、その怪物が一つの生物として存在する世界まで想像する。

僕は、この発想が『夜桜さんちの大作戦』に登場する特殊能力の設定にも通じていると考えています。

現実の知識に、そのまま従うのではない。

現実の知識を踏み台にして、もっと奇妙な世界へ跳ぶ。

権平先生のファンタジーには、そんな自由さがあるのです。

『ポロの留学記』はどんな作品?主人公は魔界の王子

『夜桜さんちの大作戦』の直前に連載された作品が、2017年の『ポロの留学記』です。

「週刊少年ジャンプ」2017年12号から29号まで連載され、単行本は全2巻で刊行されました。

主人公は、魔界の王子・黒神ポロ。

魔界は力と争いが支配する世界ですが、ポロはその暮らしに嫌気がさし、憧れていた人間界へ留学します。

圧倒的な力を持ちながら、彼自身は戦いを望んでいません。

日本の文化を学び、学校生活を送り、友人と交流する。そんな日常を求める主人公なのです。

第2巻では、友人たちが事件に巻き込まれ、ポロがその解決に向き合う展開も描かれます。

ここには、後の『夜桜さんちの大作戦』を考えるための重要な手掛かりがあります。

ポロの強さは、最初から備わっているものです。

しかし、彼が望む生活は、その圧倒的な力だけでは手に入りません。

強いという事実と、幸せに生きられるという事実は違う。

この二つを分けて描いている点に、権平先生の作家性が表れているように感じます。

『ポロの留学記』は全2巻で完結しましたが、その主人公が抱えていた願いは、次の代表作へ形を変えて受け継がれたのではないでしょうか。


『夜桜さんちの大作戦』第8巻に見る作風の特徴とは?

第8巻は2021年4月30日発売!「夜桜前線」と「開花」を収録

権平先生の作風を具体的に考えるなら、『夜桜さんちの大作戦』第8巻は興味深い資料になります。

集英社の公式書誌情報によると、第8巻は2021年4月30日に発売されました。

ISBNは978-4-08-882663-9で、作戦62から作戦70までの9話が収録されています。

この巻で中心となるのは、皮下を捕らえるために夜桜一家が動き出す「夜桜前線」です。

兄弟姉妹は、それまでに関わったスパイたちの協力も得ながら戦いの準備を進めます。

太陽もまた、義祖父の夜桜万から特訓を受け、自身の力を「開花」させることを目指します。

序盤のスパイコメディから、特殊能力を軸にした本格的な戦闘へ、作品が大きく広がっていく時期です。

ただし、この巻が印象深いのは、戦闘のための準備だけが描かれているわけではないことです。

第63話「開花」と第65話「ババ抜き」が並ぶ意味

第8巻の収録話を見てみましょう。

作戦62「夜桜前線」、作戦63「開花」、作戦64「夜桜の根」に続いて、作戦65「夜桜夫婦ババ抜き大決戦!!」、作戦66「お花見」が配置されています。

そして作戦67「白骨島上空5000m」以降、再び大規模な作戦が展開されます。

この並びを眺めると、権平先生の構成上の特徴が見えてきます。

能力を高め、敵へ立ち向かう準備を進める緊迫した展開。

その途中に、夫婦でカードゲームを楽しむ時間や、花見という季節の行事が挟まれているのです。

普通に考えれば、戦闘と日常の緩急をつけるための構成でしょう。

しかし僕は、それだけではないと感じています。

太陽にとって強くなることは、戦いに勝つという目的だけに結び付いているわけではありません。

六美と一緒に過ごす時間や、夜桜家の一員として暮らす日々が、彼の行動の理由になっています。

だからこそ、戦闘準備の途中で日常が描かれることには意味があります。

読者が守るべき生活を具体的に知っているから、戦いの結果にも感情を重ねられる。

戦闘回と日常回が互いの価値を高める関係になっているのです。

夜桜家のキャラクターは「専門性の違い」で動く

権平先生のもう一つの特徴が、登場人物の能力や性格を、人間関係の中で機能させることです。

長男の凶一郎は優れた戦闘能力を持ちながら、六美に対して過剰な愛情を見せます。

二刃は小柄な外見とは対照的な実力者であり、辛三は武器を扱う技術に長けています。

四怨は電子機器やゲームを得意とし、嫌五は変装能力を生かして活動します。七悪にも、ほかの兄弟姉妹とは異なる特性があります。

大切なのは、全員が同じ種類の強さを持っているわけではないことです。

状況に応じて、必要とされる能力が変わります。

誰かが前に出る場面もあれば、ほかの人物の専門性が問題解決の鍵になる場面もある。

ここで思い出したいのが、権平先生の大学時代の経験です。

北海道大学のインタビューでは、多様な知識や特技を持つ学生との出会いが、キャラクター作りにも多少影響したかもしれないと語っています。

これは本人が認めている、創作と大学生活の接点です。

ただし、特定の夜桜家の人物に実在の研究者がモデルとして存在するという話ではありません。

僕が興味を持つのは、モデルの有無ではなく、異なる能力を持つ人々を一つの集団として描く発想そのものです。

一人だけが優れている世界よりも、違う能力を持つ人々が協力する世界のほうが、ずっと複雑な物語を生み出せる。

その面白さを、権平先生は理解しているのではないでしょうか。


考察:権平ひつじ先生の作品に共通する「強さ」の本当の意味

『ポロの留学記』と『夜桜さんちの大作戦』は主人公の出発点が逆

ここからは、作者の経歴と作品の具体的な構成を踏まえて、僕なりの考察を深めたいと思います。

『ポロの留学記』と『夜桜さんちの大作戦』は、一般的には魔界コメディとスパイアクションという異なるジャンルの作品として整理できます。

しかし、僕は単なるジャンル変更として片付けるのは惜しいと思っています。

なぜなら、二作品の主人公は、まるで鏡に映したように正反対の場所から物語を始めているからです。

『ポロの留学記』の黒神ポロは、最初から圧倒的な力を持つ魔界の王子です。

彼が望むのは、さらに強くなることではありません。

戦いから離れ、人間界で当たり前の生活を送ることです。

一方、『夜桜さんちの大作戦』の朝野太陽は、最初から強い主人公ではありません。

家族を失い、人付き合いにも苦手意識を抱える、ごく普通の高校生です。

そんな彼は、六美を守るためにスパイの世界へ入り、自ら戦う力を求めます。

つまり、ポロは「強すぎる自分」から距離を置こうとし、太陽は「力を持たない自分」から変わろうとする。

出発点は逆なのに、目指すものは驚くほど近いのです。

二人とも、自分が望む生活を取り戻そうとしている。

ここが重要だと思います。

権平先生の主人公にとって、強さは人生の最終目的ではありません。

強さは、自分の望む生き方を実現するために、使ったり、時には使わずに済ませたりするものなのです。

もしこの読み方が正しいなら、『ポロの留学記』と『夜桜さんちの大作戦』は、同じ問いを正反対の方向から描いた作品として理解できます。

強い人間は、どうすれば望む生活を手に入れられるのか。そして、弱い人間は、大切な生活を守るためにどう変わるのか。

この対比に気付くと、二作品の関係が急に鮮明になります。

単純な前作と代表作の比較ではない。

同じ作家が、自分の関心を別の角度から掘り下げているように見えるのです。

第8巻の「開花」「お花見」「葉桜の開花」に隠された構造

もう一つ、僕が見逃せないのが、第8巻の各話タイトルです。

作戦63は「開花」。

作戦66は「お花見」。

そして作戦69には「葉桜の開花」というタイトルが付いています。

これ、単なる偶然の言葉の重なりで片付けていいのでしょうか。

もちろん、これらの題名を通して作者が一つの象徴を意識的に配置したと、本人が説明しているわけではありません。

しかし、同じ巻の中に「開花」という能力に関わる言葉と、花を眺める日常の言葉が並んでいることは、実際に確認できる事実です。

ここから、僕は一つの仮説を立てています。

権平先生は、能力の成長と家族の中で生まれる感情の成長を、同じ「花が開く」というイメージに重ねているのではないか。

作戦63の「開花」は、太陽がスパイとして持つ力の変化に関わる言葉です。

一方、作戦66の「お花見」は、咲いた花を眺めるという、ごく日常的な行事を示しています。

そして作戦69では、再び「開花」という言葉が登場します。

戦闘に関わる能力と、穏やかな季節の風景。

この二つが、同じ巻の中で「花」という共通の語彙によってつながっているのです。

僕は、ここに権平作品の面白さが凝縮されていると感じます。

「開花」という言葉は、能力が発現することだけでなく、人間が成長することにも使われます。

太陽が夜桜家に入った当初、彼はスパイとして未熟な存在でした。

しかし、家族の一員として関わる時間を積み重ね、誰かを守るための役割を獲得していきます。

その変化もまた、太陽にとっての開花と呼べるのではないでしょうか。

そして夜桜家という名前そのものにも、桜の花が含まれています。

家族の名前、能力の名称、季節の行事。

これらが同じ植物のイメージを共有していると考えると、作品の世界観には、想像以上に統一された象徴が流れているように見えてきます。

単なる能力覚醒の演出ではない。

花が咲くという現象を、個人の力と家族の成長の両方に重ねているのだとしたら。

……この構成、かなり美しい。

ただし、あくまでも話数の配置と言葉の共通性から導いた読者としての解釈です。

実際の演出意図を確定するには、作者の発言や各話の画面構成をさらに検討する必要があります。

それでも、作戦63、66、69という順番でタイトルを読み直すだけで、物語の別の輪郭が浮かび上がるのは確かです。

北海道大学での研究経験は「世界のルール」を描く力になったのか

最後に考えたいのが、権平先生の科学的な知識と、漫画における想像力の関係です。

科学的な教育を受けた作者だから、能力設定も科学的に正確なのだろう。

そう考える人もいるかもしれません。

しかし、本人の発言を見ると、実際には少し違います。

北海道大学の2022年のインタビューで、権平先生は『夜桜さんちの大作戦』第74話に登場する海洋大循環の扱いについて説明しています。

現実の海洋大循環は非常に長い時間をかけて起こる現象ですが、作中ではフィクションの設定として大胆に利用されました。

権平先生自身も、現実の科学と一致しない部分があることを理解したうえで、想像を膨らませていると語っています。

僕は、ここに作者の創作姿勢がよく表れていると感じます。

科学の知識は、物語の自由を制限するためだけに存在しているわけではありません。

現実の世界がどのような仕組みで動いているかを知っているからこそ、その仕組みを拡張した空想を楽しめる。

『幻獣医トテク』で架空の生物に学名を与えたことも、同じ発想の一例でしょう。

現実の法則を理解しながら、架空の世界には別の可能性を与える。

その結果、奇抜な設定に、現実の知識から借りた説得力が生まれるのです。

さらに注目したいのが、『夜桜さんちの大作戦』第39話の水族館デートです。

権平先生は北海道大学のインタビューで、この場面は大学時代の知識を生かしやすく、ネームも進めやすかったという趣旨の話をしています。

海洋大循環という大規模な自然現象と、水族館という身近な場所。

両方が、同じ作者の知識から生まれているわけです。

ここで僕は、もう一つの共通点を感じます。

権平先生の漫画は、巨大な世界の仕組みと、個人の小さな感情を結び付けるのが巧みなのではないでしょうか。

壮大な能力バトルの裏側で、主人公は一人の大切な相手を守ろうとしています。

複雑な自然現象の中で、一つ一つの生物が生きているように、巨大な物語の内部にも、それぞれの登場人物の生活があります。

もちろん、研究経験がこうした構成を直接生んだという証拠はありません。

ただ、権平先生が身に付けた観察の姿勢と、登場人物の関係を丁寧に描く作風には、どこか共通するものがあるように思います。

そして、ここで2011年の新人賞講評へ戻りたくなります。

編集部が早くから評価していたのは、構成力とキャラクターの生命感でした。

後に権平先生は、科学的な知識を自由な想像力へ変換しながら、多数の人物が登場する長期連載を描き切りました。

初期から持っていた長所と、大学生活で得た経験。

その両方が、異なる形で代表作を支えた可能性は十分に考えられます。

新人賞受賞から約14年を経て、全29巻の物語が完成した。

その時間を思うと、『夜桜さんちの大作戦』という作品そのものが、権平先生にとって一つの大きな「開花」だったようにも感じられます。

今後の権平ひつじ先生は何を描くのか

『夜桜さんちの大作戦』の原作は2025年1月に完結しました。

一方、2026年10月にはテレビアニメ第2期の第2クールが始まり、作品に触れる機会は続いています。

では、権平先生自身は次にどんな作品を描くのでしょうか。

新連載の題材や開始時期について、ここで確かな発表として紹介できる情報はありません。

したがって、次回作の内容を予想だけで断定することは避けたいと思います。

ただ、過去作品をたどった今、個人的に期待したい方向性はあります。

それは、権平先生がこれまでに描いてきた「特別な能力を持つ人物と、身近な感情の関係」を、別の世界でも見てみたいということです。

魔界から来た王子と、スパイ一家に迎えられた高校生。

この二人は置かれた状況こそ異なりますが、どちらも自分の生き方を選ぼうとする人物でした。

次の作品では、その問いがどんな姿に変わるのでしょう。

SFかもしれませんし、生物学的な想像力を前面に出したファンタジーかもしれません。

あるいは、まったく異なる題材になる可能性もあります。

僕が注目したいのは、作品のジャンルよりも、主人公が最初に何を望むのかという部分です。

『ポロの留学記』では、強い主人公が平穏を求めました。

『夜桜さんちの大作戦』では、弱さを抱えた主人公が大切な人を守る力を求めました。

その次に現れる主人公が、どんな欠落を抱え、どんな選択をするのか。

そこに、権平ひつじという作家の新しい一面が表れるのではないかと考えています。



まとめ:『夜桜さんちの大作戦』作者・権平ひつじ先生の魅力

『夜桜さんちの大作戦』の作者は、北海道出身の漫画家・権平ひつじ先生です。

北海道大学水産学部で海洋生物について学び、2014年3月に卒業しました。

漫画家としての転機となったのは、2011年に初投稿した『IBIS』で第43回JUMPトレジャー新人漫画賞の佳作を受賞したことです。

その後、『チャコの脱獄論』『こっくり屋ぁい!』『幻獣医トテク』などの読み切りを発表し、2017年には『ポロの留学記』で本誌連載デビューを果たしました。

そして2019年、『夜桜さんちの大作戦』の連載を開始。

同作は2025年1月に全258話で完結し、単行本は全29巻となりました。

権平先生の作風を考えるうえで、とくに重要なのは、次の三つだと思います。

  • 特別な能力を持つ人物を、他者との関係の中で描くこと
  • 科学や生物に関する知識を、大胆なフィクションへと変換すること
  • 戦闘能力の強さだけでなく、その力を使って守りたい生活を描くこと

さらに、2011年の新人賞講評で評価された構成力やキャラクター表現が、長期連載作品の大きな魅力につながっている点も見逃せません。

『ポロの留学記』の黒神ポロと、『夜桜さんちの大作戦』の朝野太陽。

二人の主人公を比較すると、権平先生が異なるジャンルを通して、強さと生き方の関係を描いてきたように感じられます。

そして、第8巻の「開花」「お花見」「葉桜の開花」という言葉の配置にも、戦いと日常を結び付ける作者らしい構成が見えてきます。

ただ派手な能力を描くだけではない。

その力を持つ人物が、誰とどんな時間を過ごしたいのかまで描く。

僕は、そこに権平ひつじ先生の物語が長く心に残る理由があると考えています。

海の生き物に魅了された少年が、やがてスパイ一家の物語を描き、読者に新しい家族の形を見せてくれた。

その歩みを知った後では、夜桜家の何げない日常風景も、以前とは少し違って見えるのではないでしょうか。



よくある質問

『夜桜さんちの大作戦』の作者の名前は何と読む?

作者の名前は権平ひつじ(ごんだいら・ひつじ)です。

北海道出身の漫画家で、『ポロの留学記』『夜桜さんちの大作戦』などを手掛けています。

権平ひつじ先生の出身大学はどこ?

北海道大学水産学部です。

2014年3月に卒業し、大学時代にはスサビノリのストレス耐性に関わる遺伝子を研究していました。

大学1年生のときに投稿した『IBIS』が新人賞を受賞し、漫画家を目指すきっかけになりました。

『夜桜さんちの大作戦』以前の連載作品は?

2017年に「週刊少年ジャンプ」で連載された『ポロの留学記』です。

魔界の王子・黒神ポロが、人間界での生活に憧れて留学するコメディ作品で、単行本は全2巻です。

『夜桜さんちの大作戦』の漫画は完結している?

原作漫画は完結しています。

2025年1月20日発売の「週刊少年ジャンプ」8号に掲載された第258話が最終話で、単行本は全29巻です。最終巻は2025年3月4日に発売されました。

『夜桜さんちの大作戦』第8巻はいつ発売された?

2021年4月30日です。

集英社の公式書誌情報によると、ISBNは978-4-08-882663-9で、作戦62から作戦70までが収録されています。

「夜桜前線」「開花」「お花見」など、戦闘と日常の両方を楽しめる巻です。

『夜桜さんちの大作戦』のアニメ第2期は放送されている?

2026年4月12日から第2期が放送され、2026年10月11日には第2期第2クールが始まりました。

原作漫画はすでに完結していますが、アニメでの展開は続いています。放送・配信の最新情報はアニメ公式サイトで確認できます。

相沢 透(あいざわ・とおる)

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