光が死んだ夏 腐向け視点で読み解く関係性｜よしきと光はBLなのか？

「これはBLじゃない。でも、BLよりもずっと刺さる」──そんな声が、私のタイムラインを何度もすり抜けていった。

2025年夏アニメとして放送直前の『光が死んだ夏』。ジャンルはホラー、でもその本質には“関係性の異常な濃さ”がある。そして、よしきとヒカルの間に流れる空気に、多くの腐女子たちが惹き寄せられている。

この記事では、BL的解釈・ブロマンス・依存・心情描写──そうした“腐向け視点”で、ふたりの関係性を徹底解剖していく。「BLじゃないのに、なぜこんなに沼るのか？」という問いに、言葉で触れていきたい。

よしきと光、あるいは“ヒカル”。その境界が曖昧なまま交差する、痛々しくも美しい感情の軌跡。その真相と魅力を、ここで読み解こう。

『光が死んだ夏』とは？ホラーと青春が交差する異色作

ジャンル構成と世界観──ホラー×ブロマンスの融合

『光が死んだ夏』は、2025年夏アニメとして注目を集める青春サスペンスホラー作品です。もともとはモクモクれん氏による漫画作品で、2021年からWeb連載が始まり、現在は単行本6巻まで刊行。物語の舞台は、鬱蒼とした山々に囲まれたある村。失踪した幼なじみ・光が“ヒカル”として帰ってきた瞬間から、少年・よしきの世界がゆっくりと崩れていきます。

ジャンルは明確に「ホラー」とされているものの、そこに通底するのは静かで湿度のある青春ドラマ。日常の裂け目からじわじわと忍び込む不気味さと、人と人との“親密すぎる距離感”が絡み合い、読者を異質な世界へ引きずり込んでいきます。

筆者の視点で言えば、この作品の本当のジャンルは“ブロマンス・ホラー”。明確な恋愛描写はなくても、登場人物たちの心理的な密着感、そして何かを共有して壊れていくその過程は、まるで恋愛を描く物語のように切実です。よしきとヒカルの関係性に滲む「恋より深いもの」が、読む者の胸に静かに刺さるのです。

この“ジャンルのねじれ”こそが『光が死んだ夏』の最大の魅力。ホラーとしての不穏さに、青春の痛みと人間の業が混ざり合い、観る者・読む者のジャンル感覚を曖昧にしていきます。「これはホラー？それともBL？それとも──」という読後の問いかけ自体が、作品体験の一部なのだと感じました。

だからこそ、ジャンル表記を超えて、腐向け視点でもこの作品は大いに語る価値があります。ホラー×青春、そしてブロマンス。その交差点にある『光が死んだ夏』という作品は、決して単なる“怖い話”では終わらない、関係性の物語なのです。

作者・モクモクれんの創作背景とプロトタイプBLの痕跡

『光が死んだ夏』の作者、モクモクれん氏はもともとBL系創作で名を知られる漫画家です。プロトタイプはpixivに投稿されたBL短編で、のちに『光が死んだ夏』として商業展開された際には、ホラー・サスペンスとして再構築されました。この出自こそが、現在の“腐向け読み”の土壌とも言えるでしょう。

モクモクれん氏自身は、「これはBLではない」としながらも、キャラ同士の“依存関係”や“執着”“選択される痛み”といった、BLで描かれがちな関係性を巧みに物語に織り込んでいます。つまり、あえて恋愛要素をぼかすことで、関係性の“濃さ”そのものが際立つ構造になっているんですね。

特に注目したいのは、BL的な肉体性が排除されていることによって、よしきとヒカルの精神的な結びつきがより際立って見えるという点です。接触のない愛情、言葉にならない執着──そうした感情の“湿度”が作品全体に漂っていて、読者はそこに“BL的感触”を感じ取ってしまうのだと思います。

そして、それは意図された演出なのだと私は考えています。ホラーでありながら、BL的な関係性を仄めかすことで、より多くの読み手が多層的に楽しめる構造を持たせている。ジャンル越境の感覚がこの作品の“中毒性”を高めているのです。

腐向けの読み方は、この作品にとって“副産物”ではなく、むしろ“想定読者層の一部”として折り込まれているのでは──とさえ思える節があります。モクモクれんという作家の背景を知ることで、よしきとヒカルの異様な距離感もまた、意図的な物語装置として浮かび上がってくるのです。

よしきとヒカルの関係性はBLか？ブロマンスか？

キスはある？ない？濃厚な視線とゼロ距離演出の意味

『光が死んだ夏』を読んでいて、まず誰もが引っかかるのが、よしきとヒカルの“距離感”です。物理的な意味でも心理的な意味でも、ふたりの関係性は異常なほど近い。よしきの目に映るヒカルは、ただの幼なじみ以上に「何かを許してしまう存在」として描かれており、その視線の重たさが異様な緊張感を生み出しています。

公式には、よしきとヒカルがキスを交わすような描写は存在しません。ですが、“キス寸前”と思えるようなシーンや、頬を寄せ合い、耳元で囁くような親密な構図が幾度も登場します。これにより、読者はBL的文脈を無意識に想起してしまうんですよね。

この“描かれていないこと”が逆に感情を刺激する。BLファンにとっては「描かれてない＝ない」ではなく、「描かれてない＝想像できる」なんです。公式の限界ギリギリまで接近しつつ、ギリギリで交わらない。この“ゼロ距離の焦らし”こそが、腐女子たちの心をつかんで離さない要素だと断言できます。

私はこの関係性を、“無音のキス”だと感じています。言葉も行動も交わされない代わりに、視線と表情、沈黙の間にすべてが詰まっている。だからこそ、恋愛感情なのか依存なのか、執着なのか執念なのか──その全てが混ざり合った関係性として、読者の心に深く沈んでいくのだと思います。

BLでよく描かれる“身体性”ではなく、“感情の濃さ”だけで関係性を浮き彫りにする演出。ホラーの緊張感とブロマンスの親密さが融合したこの構図は、まさに“見せないことで見せている”傑作だと、私は確信しています。

腐女子の考察が止まらない“依存”と“すり替え”の構図

『光が死んだ夏』の最大の仕掛け──それは「すり替えられた光」と、彼を受け入れ続ける“よしき”の心理構造にあります。ヒカルはもう“光”ではない。それでも、よしきはそれを知っていてなお、彼を拒絶せず共にいる。この異様な選択は、単なる友情の枠では説明がつきません。

ここで読み解くべきキーワードは、“依存”です。よしきはヒカルの正体が光でないと知りつつ、その偽りの存在に感情を委ねている。そしてヒカル（＝何か別の存在）もまた、よしきに異常な執着を見せる。これは“恋”ではなく、“選ばれたい”という強烈な欲望のぶつかり合いなんです。

この依存と執着のループは、腐向け視点で見ると極めてBL的な構図です。しかも、“すり替え”というモチーフは、BLにおいて時折描かれる「本当の自分では愛されない」という恐怖とも通じます。だからこそ、多くの腐女子がこの物語に“痛いほどの共感”を覚えるんだと思うんですよね。

noteやpixiv、SNSでは「これはクィア的な読みができる」「自己投影型BLだ」といった評価が増えており、単なる“ホラー漫画”という枠を超えて、多層的な関係性の読みが加速しています。「これはBLなのか？」という問いに対し、答えは一つではなく、“読む人の数だけある”のです。

私はこうした構造を、「関係性のホラー」と呼んでいます。人間の“好き”の感情が、正しいかどうかではなく、必要かどうかで動いてしまうとき、それはときに“恐怖”と紙一重になる。『光が死んだ夏』は、そんな感情の原型を描いているのだと思います。

『光が死んだ夏』は腐向け？公式見解と読者の解釈

モクモクれんの発言と“読者に委ねる”スタンス

『光が死んだ夏』の作者であるモクモクれん氏は、作品内の関係性に対して“BLである”とは明言していません。むしろインタビューやSNSなどでの発言では、「読者の受け取り方に委ねたい」「これはBLではない」というスタンスを貫いています。

ただし、その発言の行間からにじみ出るのは、“明示しないことで、読者の想像力を最大限に生かしたい”という物語作家としての矜持。モクモクれん氏の過去作がBLであり、プロトタイプの『光が死んだ夏』もpixivにてBLジャンルで公開されていたことを考えると、この「BLと明言しない戦略」は、決して偶然ではありません。

筆者の視点から言えば、これは“商業的リスクヘッジ”というより、“物語の余白を守るための選択”だと感じています。よしきとヒカルの関係性を、読者が自由に解釈し、自分だけの答えを持つこと──それこそが、この作品を“腐向けでもあり、そうでなくもある”特異なポジションに押し上げている所以なのです。

作品ジャンルはあくまで「青春サスペンスホラー」として公称されています。ですが、そう明記すること自体が、逆に“BLとは違う文脈でBL的な感情を描く”ための布石とも受け取れる。その矛盾が、この作品の“引っかかり”の正体だと私は思います。

つまり、公式が「これはBLです」と言ってしまった瞬間に失われる何かがある。『光が死んだ夏』は、“その手前”にずっととどまり続けている。それが、この物語をここまで特別なものにしている一因なのです。

note・pixiv・SNSでの腐女子層の評価と読み方

“公式ではBLじゃないけど、私の中では完全にBL”──そんな読者の声がSNSやnote、pixivのレビュー欄にあふれています。よしきとヒカルの関係性は、言葉にされないだけで、読者の胸を射抜く“なにか”を確かに宿しているのです。

特にnoteでは、「ブロマンスを超えた濃密な依存」「湿度の高い心理描写がBL以上に刺さる」といった表現が多く見受けられます。“濡れていないのに濡れている”“キスしてないのに抱いている”──そんな表現が自然と湧き上がってくる関係性。そこに多くの腐女子が“尊さ”を感じ取っているのは、もう明白です。

pixivでは「#よしヒカ」「#光が死んだ夏 BL」タグで多くの二次創作が投稿されており、その中には“公式では描かれない感情の行間”を丁寧に埋めていくような物語も多い。読者が勝手に妄想しているのではなく、公式が意図して“妄想できる余白”を残している──それがこの現象の本質です。

また、Yahoo!知恵袋などのQ&Aサイトでも、「これってBLに入るんですか？」という問いが多く見られます。それに対しての回答は、「違うけど、それ以上のなにかがある」といった、曖昧な肯定の言葉が並ぶ。それこそが、この作品が腐向け読みされる強さの証左だと感じます。

私はこの“受け手主導のBL体験”こそが、現代的な作品受容の形だと考えています。ジャンルの名前ではなく、感情の濃度が人を沼に引きずり込む時代。『光が死んだ夏』は、まさにその代表的な作品だと、声を大にして伝えたいです。

アニメ化目前！2025年版『光が死んだ夏』で描かれるBL的緊張感

アニメ演出でさらに高まる“腐向け読み”の期待

2025年7月5日から、いよいよTVアニメ『光が死んだ夏』が日本テレビ系列で放送スタート。原作ファンにとっては待望のアニメ化であり、同時に“腐向け視点”でこの作品を愛してきた読者にとっては、演出の“攻め方”が問われる局面でもあります。

というのも、『光が死んだ夏』は原作段階でBL的文脈を強く含みながらも、あえてそこを曖昧にして読者の想像に委ねてきた作品です。その微妙なバランスが、アニメという“ビジュアルと音が加わる表現媒体”でどう保たれるのか──そこに、大きな注目が集まっています。

予告映像を見るかぎり、アニメ版は原作の「距離感」「湿度」「沈黙」を非常に丁寧に拾い上げている印象があります。よしきとヒカルの視線の交錯、言葉にならない沈黙、村に漂う異様な気配──そういった“関係性ホラー”的な空気を、映像演出としてどう表現するかで、このアニメが“BL的に読めるか否か”の分水嶺が決まりそうです。

筆者の予想としては、アニメ化によってさらに“腐向け読み”が加速すると見ています。演出の力で、“キス未遂”シーンがよりドキッとするように描かれる可能性が高く、またヒカルのセリフのトーンや間の取り方一つで、BL的ニュアンスは一層強調されるはずです。

これは“恋愛を描いていないBL”という極めて繊細なバランスの物語です。だからこそ、アニメーションでの描き方次第で、関係性の“深さ”と“怖さ”が、よりリアルに、より腐女子的に“刺さる”ものになっていく。その期待感が、今まさに高まっています。

制作スタジオと放送情報──CygamesPicturesの手腕に注目

『光が死んだ夏』のアニメーション制作を担当するのは、CygamesPictures。『ウマ娘』で知られるCygamesのアニメ制作部門で、これまでにも丁寧な演出と美麗な作画で評価を受けてきました。このスタジオが“関係性で見せるサスペンス”をどう映像化するのか──注目せざるを得ません。

放送は日本テレビ系列で、2025年7月5日（土）より毎週深夜枠でオンエア。さらにNetflixとABEMAでの配信も決定しており、地上波を見逃しても追いつける体制が整っています。グローバル展開にも意欲的なCygamesの動きから察するに、この作品を単なる国内向けホラーで終わらせるつもりはないという本気度を感じます。

特に腐女子視点で注目したいのが、演出陣の起用と脚本のトーン。CygamesPicturesは感情の機微を丁寧に拾う演出で定評があり、“語らないで伝える”間の取り方が非常に巧み。『光が死んだ夏』においては、この技術が“BL未満のブロマンス”という繊細な関係性をどう描くかで、作品の評価が大きく左右されるでしょう。

また、キャスト陣にも期待が集まっています。よしきとヒカルの演技における“呼吸の取り方”“声の近さ”“震え方”──それらすべてが、視聴者にBL的な感触を与える鍵になります。声優の演技力ひとつで、シーンの印象が一気に“腐向け”へと傾くことも大いにあり得るのです。

筆者としては、このアニメ化によって『光が死んだ夏』という作品が新たな読者層・視聴者層──とくに“腐女子”たちに向けて強烈に再発見されることを期待しています。“腐向けかどうか”の判断は、視聴者自身がするもの。アニメ化は、その解釈の幅を一段と広げるきっかけになると信じています。

BLではないのにBLより深い──よしきとヒカルの“関係性沼”

“好き”の言語化を超えた情感と沈黙

『光が死んだ夏』を読み進めるうちに、いつの間にか私たちは「よしきとヒカルってどういう関係なの？」という問いを繰り返すようになります。友達？家族？それとも──恋人？でも、彼らの間にあるものは、そのどれでもなく、そして全部でもあるような、言葉では定義しきれない“なにか”です。

よしきは、ヒカルが「本物の光ではない」と知りながらも、その存在を拒まず、むしろ選び続ける。ヒカルはヒカルで、よしきを独占し、執着し、まるで“愛している”かのように振る舞う。にもかかわらず、そこに“好き”や“愛してる”のセリフは一切存在しません。

この“言語化されない感情”が、逆に読む者の心を掴んで離さない。BL作品においてよく描かれる「恋愛感情の明示」がなくても、ここには明確な情感が宿っている。むしろ言葉がないことで、感情の輪郭がより深く、より暗く、より複雑に浮かび上がる──そんな構造です。

筆者としては、この関係性を“沈黙の愛”と表現したい。会話の裏側に漂う空気、視線の動き、黙って立ち尽くす背中の揺れ。そういったノンバーバルな描写の積み重ねが、「これはBLじゃない。でも、BLよりも深い」という実感を生み出しています。

『光が死んだ夏』は、感情をセリフで語らず、視線と空気と沈黙で描く。その表現スタイルが、腐女子たちの“読みたい欲望”をこれでもかと刺激してくるのです。ここには、商業BLでは描き得ない“距離感の残酷さ”があり、それが読者の沼を深くしているのだと思います。

関係性に潜むクィア性と、人外BL的アプローチ

『光が死んだ夏』には、もうひとつ特筆すべき重要な軸があります。それが、“クィア的な関係性の描き方”です。ヒカルは、人間ではない“なにか”にすり替わって帰ってきた存在。つまり、人外です。けれどその“異質さ”にこそ、よしきは強く惹かれてしまう。

この構造は、いわゆる“人外BL”の典型です。違う存在、理解しきれない存在、自分を侵食する存在──そうした相手に恋にも似た執着を抱くというモチーフは、古くからBLの中でも一部の読者に強烈に支持されてきました。そしてこの作品では、それが青春ホラーという枠組みの中で、極めてナチュラルに描かれている。

ヒカルの存在は、単なる“すり替え”ではなく、“よしきにとっての救済”であり“呪い”でもあります。これはBL的な愛憎関係とも読めるし、クィア的な“異なるものとの共生”としても読める。そして何より、それを描く手つきがあまりにも自然で、意図的な演出に見えないからこそ、読者の心に直接響いてしまうのです。

この“ジャンルに収まらない描き方”こそが、モクモクれん氏の真骨頂。人外×少年の関係性をホラーとして描きながら、BL的文脈も読めるように設計されている──それは腐女子にとって、まさに“最強の供物”です。何もかもが説明されないからこそ、すべてを受け止めたくなる。

筆者としては、この作品は“異質性との対話”だと捉えています。それは恋かもしれないし、友情かもしれない。あるいは、もっと原初的な「おまえがいないと、俺が俺でいられない」という渇望。そういう、名前のない感情を、物語の奥底から静かに差し出してくるのです。

光が死んだ夏 腐向け視点まとめ

よしきとヒカルの関係性は“読者の想像”によって完成する

『光が死んだ夏』という作品において、よしきとヒカルの関係性は明確なラベリングを拒み続けています。BLではない──でも、それ以上に“関係性の濃さ”があり、“選び続ける”痛みと執着が、静かに読者の胸を締めつけてきます。

腐向け的な文脈で言えば、この作品はまさに“読者の想像で完成する物語”です。作者・モクモクれんは明言を避けながら、視線・間・感情の沈黙といった非言語的な手法で“BL未満のブロマンス”を紡いでいます。その空白が、読む者に解釈の余地を与える──つまり、公式の“黙り”が、逆に強烈な“語り”になっているのです。

筆者として強調したいのは、この作品の“腐向け要素”は単なるファンサービスではないということ。むしろ、感情の機微を描く物語としての完成度の高さが、結果的にBL的読解を可能にしてしまっている。ジャンル越境の快楽こそが、この作品の真骨頂です。

そしてその受け取り方は、本当に人それぞれ。恋愛として読む人もいれば、友情、あるいは家族愛、自己投影、クィアなアイデンティティとして読む人もいる。すべての読み方が正しく、すべての感情が許されている──そんな“受容の幅”を持った作品だからこそ、多くの読者を深く惹きつけてやまないのだと私は思います。

よしきとヒカルが交わす“無言の約束”や“触れない接触”は、読む者の心に不思議な余韻を残していきます。BLじゃない。でも、こんなにも“感じてしまう”。その体験こそが、『光が死んだ夏』が腐女子たちにとって“特別”であり続ける理由なのです。

腐向け読みの広がりが作品そのものを深化させる

『光が死んだ夏』を“腐向け”として読むことに、最初は少し後ろめたさを感じていた人もいるかもしれません。「これは公式にはBLじゃないし、勝手に妄想してるだけかも…」と。でも、その“想像”こそが、この作品の楽しみ方のひとつなんです。

noteやpixivのレビューを見ても、多くの読者が“恋ではない何か”を感じ取り、その感情を物語として昇華させようとしています。創作BLとして再構築した二次創作も多く投稿されており、そうした動きが、原作の持つ“物語の余白”をさらに深く掘り下げている。

腐向けの読みが、決して原作を損なうものではなく、むしろ原作の構造をより豊かに、より多層的に理解させてくれる。この現象は、かつての同人文化や“やおい”読みとも共通する“物語の拡張”だと私は思います。

『光が死んだ夏』は、よしきとヒカルの“関係性沼”に引きずり込まれながら、どこかで自分自身の心の闇や寂しさ、依存や渇望と向き合わせてくれる作品です。だからこそ、腐女子的読みがそのまま“自己理解”につながってしまう。そんな深い読書体験をくれる物語なのです。

この作品はBLではありません。でも、“BLよりも深い”。その一文に尽きると思います。そしてこの深みに、これからも多くの読者が静かに堕ちていくのでしょう──まるでヒカルのように。